[真生活(Real Life) フィリップ・K・ディックのエレクトリック・ドリームズ1-1]私が不幸なのは、私がそう望むからなの?:海外ドラマのイラストと感想  

アメリカのSF小説の巨匠フィリップ・K・ディックの短編を原作とした、独立した10話からなるAmazon  Primeオリジナルのドラマシリーズ。

本シリーズ第1話である「真生活」を観た感想、そして感じた印象をイラストにしました。 どうしてあのような結末を迎えてしまったのか、ネタバレを多分に含みながら作品について考えてみたいと思います。

目次

作品情報

原作:Philip K. Dick (展示品) 監督:Jeffrey Reiner 出演: Anna Paquin(Sarah) Rachell Lefevre(Katie) Terrence Howard(George) Lara Pulver(Paula) https://youtube.com/watch?v=rvwS1bo0fu4&feature=share

あらすじ

刑事のサラは、凶悪な殺人犯コリンを追うなかで同僚を次々と殺され、幸せに暮らす価値はないと自分を責め続けていた。 そんなサラを見かねたパートナーのケイティは、バカンスとして夢の中で別の人生を体験出来るという開発途中のデバイスをプレゼントする。

夢の世界で、VR開発会社の創設者ジョージという全く別の人生を過ごすサラ。そこはバカンスとは程遠く、殺人犯に妻を殺された男の苦悩に満ちた、より現実味のある生活だった。 ジョージも自社で試作中のヘッドセットを付けてバカンスをとるよう勧められる。ジョージがヘッドセットを装着するとサラの現実世界へ戻るのだった。

夢の世界と現実を行き来するうちに次第に混乱していくサラ。ジョージはサラの見ている仮想現実なのか、ケイティと幸せに暮らすサラこそがジョージの見ている仮想現実なのかわからなくなっていく。

感想(ネタバレ)

NetflixのBlack mirrorのように、未来のガジェットを通して新たな問題が起こり、直面する人々…大好物です。

物語に出てくるVRデバイスのようなものが怖すぎます。ラストのサラの選択は悲しすぎました。

こういった未来のテクノロジーが出てくると、「自分の身に起こったらどうしよう、どうすれば不幸を避けられるだろう」と考えてしまいます。自分なりに怖い&悲しかったポイントをあげてみました。

不運にも重なった3つの要因

1つはデバイスの発展途上な設計思想が怖い。 CGのような作られた仮想空間なら現実と混同しないような気もしますが、夢を見るときと同じように脳に直接見せるので、視覚的にはかなり現実味があるんじゃないでしょうか。

「視界にGUIを表示させないといけない」とか、そんな法律による規制とかあってもよくないですか?やはり試作段階のVRとか安全性が確率されてから使おう~~などと思いました。

2つ目に、発展途上のソフトウェアのアルゴリズムに中毒性があって怖い。 このデバイスの特徴は、利用者の潜在的な望みを叶える内容にカスタマイズされることでした。インターネット上のフィルターみたいに、個人の好みに合わせるあまり、サラが(潜在意識も含めて)想像する範囲の事しか起こりません。それが癒しになるのでしょうが、都合の良い世界を見せるに留まりました。

自分の本当の望みって、自覚していないことも多いと思います。だから悩んだりするわけですし、ちゃんと望みを明確に言語化できたら、その時点で大抵解決しそうです。

自分の望みや知識の範囲内だけで作られたエンターテイメントだと、新たな気付きもないだろうし面白くないだろうし、偏った考え方を助長する恐れがあると言われています。

あとコンテンツ内でどちらが現実か選択を迫るのはやめた方がいいと思います……

3つ目はサラの気質や精神状態が合わなかったサラは刑事というタフな環境で、精神的に極度に追い詰められていました。 まだ試作段階の技術を、弱っている人でテストしてしまったからこその悲劇と言えそうです。

 

これらの3つが運悪く噛み合って、サラは帰らぬ人となりました

誰かが不幸になり得る行動をしている時、当の本人が望んで行動している事ってありますよね。傍目からは不幸に見えたり、命を落とすような明らかに良くない事に思えても同様です。

周囲の人たちは、お願いや忠告は出来るかもしれません。 ですが、止める事は出来ませんし、どれだけ論理的に批判しても同様です。勿論ケイティも必死に説得しますが、結局は本人が決めるしかないのです。その何も出来ないところに悲しさがあります。

結果的にケイティという愛する者と幸せに暮らすよりも自分が不幸でいる事を選択したかたちになってしまいました。サラ自身は「人生から逃げずに受け入れる事を決めた」と満足して「あちら」へ旅だったのでしょうが…。

自分ならどうしたいか?

ところでこのドラマを見た人はみな、自分だったらどれを選ぶのでしょうか?

私がサラだったなら、ジョージの人生ではなくサラの人生を選びます。と言いたいところですが、当人と同じ状況だったらと思うと自信ないですね…。

さらに言うと、ケイティにもっとも感情移入して観ていました。サラが「仮想現実世界にサラとコリンが出てきてどちらが現実かわからない」と言った時点で、議論せずに勤務先の開発部とやらに不具合報告したいです。

イラスト

原作

「展示品」という短編のようです。電子書籍版が見つからず残念ながら未読。
Amazon | 人間狩り―フィリップ・K・ディック短篇集 (ちくま文庫) 文庫 – 1991/3/1
  原作探しにはこちらの記事を参考にさせて頂きました。

俳優

Anna Paquin(サラ) 台詞がないシーンも多いなか、お顔立ちと微妙な表情とによって、頑固で神経質なまさにサラと言った感じでした。 「ピアノ・レッスン」の子役の子でびっくり。 Rachell Lefevre(Katie) 強くて行動力があり、包容力もあるケイティにぴったりな俳優さんです。しっかりと諭す表情、優しく笑いかける姿が素敵です。 「トワイライト」シリーズで強くてイケイケでワルいヴァンパイアのヴィクトリアを演じていました。

トレーラーのリンク

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